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いい競争で、いいサービスを。いい競争で、いいサービスを。

信書における問題点

クロネコメール便を廃止してから1年以上、お客さまからいまだに復活を希望する声が届いています。
廃止の理由は、信書の定義がわかりにくく、お客さまが信書を送ることで罪に問われるリスクがあるためでした。
残念ながら、その状況はいまだに改善されていません。

信書とは?

信書とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」です。(郵便法第4条第2項)

信書の問題は放置されたままです。

信書の概念は曖昧な「内容基準」のため、同じ文書でも、送付する状況や文面のわずかな違いにより、信書であったりなかったりします。

私たちは、信書に当たるか否かを国民の誰もが判断できるよう、信書の範囲を封筒の大きさで決める「外形基準」を導入することを、2013年12月 総務省 情報通信審議会 郵政政策部会へ提案しました。しかし、この提案について十分な議論がなされることはなく、2014年3月 情報通信審議会は中間答申(案)の中で、外形基準では
・憲法上保障された「通信の秘密」などを合理的に確保できない
・現在、宅配便事業者が送付できているものが送付できなくなる事態が発生し、市場の活性化につながらない
との見解を示しました。その後、2015年9月の最終答申でも十分な議論が行われることはなく、2016年7月に発足した総務省の「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」においては議題にすら上がりませんでした。

政府は信書便市場における利便性向上のため、分かりにくい信書の定義を国民の誰もが分かりやすい基準へ変更するよう、改正に向けた議論を進めるべきです。

送る人が罪に問われるリスクがあります。

信書規制の最大の問題は「何が信書に当たるのかわかりにくい」にもかかわらず、郵便または信書便以外で信書を送った場合、運送事業者だけでなく送り主も罰せられることです。

これまで私たちは、信書を送達した運送事業者のみを罰するべきであると主張し続けてきましたが、罰則規定が見直されることはありませんでした。

一方、2016年10月には日本郵便から個人向けの「ゆうパケット」が発売され、意図せぬ郵便法違反により国民が罰せられる危険は高まりつつあります。

「ゆうパケット」は「荷物を運ぶサービス」であるため信書を送ることはできません。しかし「ゆうパケット」は対面での内容物確認などの事前の事務手続きなしに、郵便ポストへ差し出すことができ、利用者は、「ゆうパケット」で信書も送れると誤認することが懸念されます。

このような状況を是正するべく、送り主への罰則規定は廃止するべきであり、また、「ゆうパケット」のような「荷物を運ぶサービス」を郵便ポストで引き受けることを中止するべきと、私たちは考えます。

ユニバーサルサービスの会計が不透明です。

私たちはユニバーサルサービスである郵便事業を維持するために国民に負担を強いる以上、どの事業・サービスが赤字であるのかを明確にし、国民に分かりやすく説明すべきであると主張してきました。

2016年7月、総務省に「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」が発足し議論が行われ、2016年12月の検討会では、郵便事業の収支状況の情報開示について、「どの部分が赤字で、どの部分がユニバーサルサービスなのかなどを国民に説明しないと理解が得られない」、「現在の収支状況の公表資料では、どれがユニバーサルサービスで、その収支がいくらであるかなどがよく分からない」との問題提起がなされる等、徐々に議論が進みつつあります。

一方、2016年10月より郵便ポストでの引受けが可能となった「ゆうパケット」に関して、私たちは「ゆうメール」や「ゆうパケット」等の「荷物を運ぶサービス」を郵便ポストで引き受けた場合、その引受けコストは、郵便物の引受けコストと会計上どのように区別されているのかについて総務省の情報流通行政局郵政行政部(以下、総務省)へ質問を行いましたが、総務省は関係法令により区分されているとの回答でした。

総務省の検討会でもユニバーサルサービスの収支状況を明確にするべきとの議論が進む中、私たちも総務省の検討会の問題提起と同様に会計が不透明であると考えています。したがって、総務省が会計区分されているとする回答には疑念を抱かざるを得ません。

今後、総務省の検討会で議論を深めていただくとともに、会計の透明性を確保し、国民に不可欠なユニバーサルサービスの範囲を明確化することで郵便事業を最小限の国民負担で維持すべきであるという考えのもと、私たちは引き続き総務省への働きかけを行ってまいります。

貨物市場の公平公正な競争が阻害されています。

日本郵便が提供する「レターパック」や「スマートレター」は、「信書も非信書も送れる」サービスとして推奨販売されています。

また、「ゆうメール」や「ゆうパケット」は荷物を運ぶサービスですが、郵便事業を維持するための資産である郵便ポストでの引受けが可能です。

「信書も非信書も送れる」サービスは、貨物市場を侵食し民間の競争を妨げるものであり、国民の利便性が阻害されることになりかねません。さらに郵便ポストで荷物を運ぶサービスを引受けることは、郵便事業者としての優遇を受けながら貨物運送事業を拡充していることに他ならず、貨物市場の公平公正な競争が阻害されていると、私たちは考えます。

民間事業者が便利なサービスを生み出しにくい状況です。

多くのお客さまから「クロネコメール便を復活してほしい」、「自由にサービスを選びたい」というご意見をいただきました。しかし、信書の定義が曖昧な内容基準で、送る側と運ぶ側の両方に対し罰則が設けられている現状では、信書の混在するおそれのあるクロネコメール便を扱うことは難しいのが実情です。そして、民間事業者同士の公平公正な競争が促進されないことから、お客さまの要望に沿ったサービスが生まれにくい状況にあります。

私たちは公平公正な競争条件のもと、互いが切磋琢磨し、より便利なサービスを創造することこそ、国民の利便性向上や日本経済の発展につながると考えています。

クロネコメール便廃止後、郵便料金が上がり続けています。

1997年に当社がクロネコメール便を開始して以降、それまで値上げを繰り返してきた郵便料金は22年間据え置かれてきました。しかし、2015年3月に私たちがクロネコメール便を廃止した後、2016年6月1日から一部の内国郵便物の基本割引率の引き下げと、国際スピード郵便(EMS)の値上げがなされました。さらに、2017年6月1日からは「はがき」や「ゆうメール」等の値上げも実施されます。

値上げの理由は、人件費の増加や再配達によるコスト増などが挙げられていますが、もし競争があれば、料金は据え置かれたかもしれません。

経営状況に応じて各事業者が提供するサービスの料金が改定されること自体に異存はありませんが、公平公正な競争環境がない状態では特定の事業者の独占につながり、国民の利便性の低下を招きかねないと私たちは考えます。

社会の動き

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